東京幡ヶ谷ホームレス女性殺人事件
去年(2020年)11月、東京の幡ヶ谷でホームレス女性が殺された。この件で、被害者女性の人生を追った特集がNHKで放映され、ホームページでも紹介されている。
追跡 記者のノートから
ひとり、都会のバス停で~彼女の死が問いかけるもの
女性は数年前までスーパーマーケットで試食販売の仕事をしながら生活していたが、4年ほど前には家賃を滞納してアパートを退去し、ネットカフェで生活するようになったという。コロナ禍の影響で去年の春から試食販売の仕事がなくなり、ネットカフェに滞在することもできず、ホームレスになったようだ。
ホームレスになって以降、昼間の生活は不明だが、最終バスが出た後、事件の現場となったバス停に来て夜を明かしていたらしい。バスの利用者に迷惑がかからない時間に、屋根があって座れるベンチがあり、夜間照明もあって治安も良さそうなその場所を選んでいたのではないかということだ。
彼女の姿を見かけ、気にかけていた人もいたのだが、声を掛けることはなかった。彼女に直接アプローチしたのが、彼女を街から排除するために暴力で脅した犯人だけだったというのが哀しすぎる。
日本では生活保護というセーフティネットがあるのに、彼女はそうした制度に頼らず、人に迷惑を掛けずに都会の片隅で過ごしていた訳だが、何とかならなかったのかと憤りのようなものを感じる。
例えば、警官が声を掛けて行政やNPOにつなげるとか、彼女を助ける方法はなかったのだろうか。
亡くなった時の所持金は8円だったというし、殺されなくても、いずれ餓死していたかもしれない。
時々、生活保護の不正受給の話題がニュースになるが、生活保護を必要とする人はいるので、このまま制度は維持しなければいけない。ただ、生活保護を必要とする人が、他人に迷惑を掛けてはいけないと遠慮して、生活保護制度の利用をためらうことは問題だと思う。今回の被害者が、ためらうことなく生活保護を利用していたらと思うと、無念でならない。