生まれて初めて死が怖いと思った日
死に対する本能的な恐怖は生まれた時からあるものだろうか。
私が「死ぬのが怖い」と初めて思ったのは幼稚園児の時だ。
秋だったか冬だったか、ちょっと寒い日に、家族でボーリングに行った。ボーリングのことは覚えていないが、とにかく楽しくて幸せいっぱいだった。
ボーリングを終えてバスに乗って帰宅した。家族5人は最後尾のシートに座っていた。夕暮れ前の西日が差し込むバスの中で、急に「死んだらどうなるのだろう。みんなでボーリングをすることも、おしゃべりすることもできなくなるのだろうか。」と恐怖に襲われた。その頃、「幸せ」という言葉すら知らなかったと思うが、家族で楽しく幸せな時間を過ごした後、その幸せがなくなることに恐れを感じたのだろう。
私は母に、「死んだらどうなるの。死ぬのは怖い。」と尋ねた。
母は、「死んだらどうなるのか分からないけど、お母さんが先に死ぬから心配しなくても大丈夫。」と答えてくれて、私は安心した。死のことはよく分からないけど、父や母がいれば怖くないし安心だと思えた。
父が亡くなり、母ももうこの世にはいない。死に対する漠然とした恐怖はあるが、それは生物の本能なのだろう。そして死について考えるとき、いつもあのバスの中での母との会話を思い出し、不安になる必要はないのだと自分に言い聞かせる。